出口戦略(イグジットプラン)、会社売却に向けて変えるべき経営者の役割

清水直樹
ほとんどの中小企業経営者は、自分が先頭に立って現場を回し、会社を成長させていくことが自分の唯一の役割だと考えています。しかし、実際には会社の成長ステージによって経営者の役割は変わりますし、出口戦略(イグジットプラン)、特に会社売却を考えるためには、3つの役割変更が求められます。本記事では経営者が出口戦略(イグジットプラン)を成功させるために、どう役割を変えていくかをご紹介してきたいと思います。

 

会社成長の5ステージ

まず経営者の役割を考えていくために、会社の成長ステージについて考えてみましょう。成長ステージについてはいくつかの理論がありますが、ここでは1983年のハーバードビジネスレビューに掲載された「The Five Stages of SmallBusiness Growth(スモールビジネス成長の5段階)」という論文を参考にしたいと思います。ずいぶん古い論文だな、と思われるかも知れませんが、非常にうまくまとまっているので、現在でも十分に役立つ内容になっています。なお、記事中の図は、論文の内容を基にオリジナルで作成しています。

 

ステージ1.存在

この段階の主な課題は、

  • 顧客を獲得し、契約した製品やサービスを滞りなく提供できるか?
  • 十分な顧客を得ることができ、継続可能なビジネスになるか?
  • 事業のプロトタイプを拡大させていくことが出来るか?
  • 現金需要をカバーするのに十分なお金を持っているか?

組織はシンプルなもので、オーナーがすべてを行い、部下を直接監督します。仕組みや計画は存在していないか、あってもレベルは高くありません。オーナー=ビジネスとなっており、すべての重要な仕事を自分で行い、方向性もすべて自分で決めます。

この段階の企業の多くが、十分な顧客を獲得することが出来なかったり、逆に商品・サービスが上手く提供できず、事業が成り立たなくなります。会社を閉じるとなると、多くは資本が尽きるだけですが、運が良ければ在庫品や設備を売って多少の投資を回収することが出来るかもしれません。

ここで生き残った企業はステージ2に進みます。

 

ステージ2. 生き残り

この段階に進むと、なんとかその事業はやっていけるということが証明されたことになります。つまり、ニーズのある顧客が存在し、彼らを満足させるだけの商品やサービスが開発できたということになります。この段階の主な課題は、資本金が尽きる前に、十分な現金を売り上げから生み出すことが出来るか?ということです。

組織はまだシンプルです。営業部長、開発部長など限られた社員数で構成されています。ただし、彼らが自分で重要な決定を下すことはなく、オーナーの明確な指示のもとに事業が運営されます。オーナー=ビジネスという構図はまだ崩れていません。

仕組みづくりはほとんど行われていません。計画づくりは、お金がどれくらい持つか?という算段が行われています。生き残れるかまだまだ予断を許さない段階です。

この段階で収益性が高まってくると、ステージ3に移行します。一方、多くの企業は”生き残り”のための仕事から抜け出すことが出来ず、長期間にわたってこの段階で停滞します。世の中の多くの自営業、パパママストアがこの段階に当てはまります。

そのうち、オーナーの体力や気力が限界を迎えると会社を閉じるか売却することになります。いずれの場合にも、大きな経済的リターンを得るのは簡単ではありません。

 

ステージ3. 成功

この段階では、オーナーは大きな決断を迫られることがほとんどです。一つ目の選択肢は、会社の業績を伸ばして拡大させていくこと。二つ目の選択肢は、拡大よりも安定を選び、収益性を維持し、典型的な中小企業として存続していくか?です。

また、この決断次第で、オーナーは引き続き事業に付きっきりになるか、またはある程度、仕事を委任していき、別のことに時間を使うか、という選択肢を得ることになります。

 

ステージ3  安定

先の選択肢のうち、二つ目の選択肢を選んだ場合は、ステージ3Disengageに移行します。この段階では、平均以上の収益性を確保できており、環境がよほど変化したり、競合が増えたり、無能な経営を行わない限り、ずっと同じように経営をしていくことが可能です。

また、リスクを冒すよりも、安定した経営を行うため、現金は豊富になっていきます。

組織内ではマネージャーが誕生し、オーナー=ビジネスの状況ではなくなります。マネージャーはオーナーが行っていた仕事や決断を引き継ぎ、オーナーの時間的自由が増えていきます。そのため、オーナーは趣味時間を使ったり、地域活動を始めたり、ということが出来るようになります。

世の中の多くの中小企業はこの段階に当てはまります。この段階で会社を売却すればある程度まとまった資金が手に入ります。

この段階で長くとどまった後、経営陣の世代交代や環境変化によって、新たな成長ステージに突入することもあります。

 

ステージ3  成長

オーナーはさらなる資金や人材を確保し、リスクを冒しながら成長を目指します。

この段階におけるオーナーの役割は、以下のようなものがあります。

  • 手持ち現金と成長への投資のバランスを取ること
  • リーダークラスの人材の育成
  • 自分の後継者を育て始める

外から見ると、ステージ3安定の企業と変わらないように見えますが、オーナーはより積極的に運営に関わり、起業家精神を社内に植え付け続けます。これに成功するとステージ4に進みます。

 

ステージ4. テイクオフ

この段階では、いかにして急成長させるか、その成長のための資金調達をどうするかが重要な問題となります。オーナーの課題は、以下の通りです。

委任

複雑化してきた経営の効率を向上させるために、責任と役割を他の人に委譲していくことが大切です。

現金

成長へ投資するための十分なキャッシュフローが売り上げから得られるか、または調達できるか?

この段階の会社の仕組みは、より洗練され、整ってきています。

ただ、このステージはリスクが高いために、積極経営に成功してステージ5に行ける会社は少なく、多くの会社が規模を縮小して、ステージ3、ステージ2に戻って安定運営へと方針転換するか、会社の売却を目指すか、または経営者を交代して経営をし続けるか、というような選択肢を迫られることも多いです。

 

ステージ5. 成熟

この段階では、経営、戦略、計画を担当するスタッフと資金を持っています。管理は分散化されており、適切なスタッフが配置され、経験を積んでいます。仕組みもITシステムも成熟しています。オーナーは会社経営から離れることもできます。

この段階で、引き継ぎ起業家精神を保ち続けることが出来れば、大きな影響力を持つ会社になります。一方、組織が官僚化してしまえば、衰退へと進んでいきます。

 

会社の成長ステージまとめ

以上、ステージをまとめると次のようになるでしょう。「組織とオーナーの関係」のところをご覧いただければわかるとおり、会社の成長ステージによって、オーナーは組織から離れて運営していけるようにしていくことが大切です。

 

社長の出口戦略に向けた役割変更

さて、この中で、会社を売却しよう、社長としての出口戦略を考えよう、となるのは、主にはステージ3以降となると思います。出口戦略を考えるにあたって、ステージ3以降では、経営者は大きく3つの役割の変更を求められます。これらの役割変更は、経営者にとって特に重要であり、かつ難易度が高いものと言えます。

1.職人から経営者へ

多くの中小企業は、オーナーの専門能力をベースに設立されます。そのため、自分の能力=ビジネスの能力、自分の限界=ビジネスの限界、となってしまうのです。まずはこの状況を変える必要があります。そのために必要なのは、自分以外の人でも同じ価値を顧客に提供できるようにするための仕組みづくりです。自分が職人的な能力を発揮するのではなく、他の人が活躍できる組織に変革していくのが経営者の役割になります。

なお、仕組みづくりについては姉妹サイト「仕組み経営」で詳しく解説しています。

仕組み化で社長不在で成長する会社を実現

 

2.組織のハブからの移行

次に、あらゆる意思決定か方針決定が自分に依存している状態、いわゆるハブ型組織から抜け出す必要があります。そのためにはマネージャー、リーダーの育成といった組織作りが必要になってきます。これに関しても「仕組み経営」で解説していますので合わせてご覧ください。

職人型ビジネスと起業家型ビジネスの違い

 

3.出口戦略実現後の新しい役割

3つ目の役割変更として、いまの会社の社長業一辺倒の人生から抜け出し、別の社会的役割や活動を探すことが必要です。この役割は、あなたが思っている以上に大切です。なぜならば他の場所での役割が見つからないと、いつまでも今の会社の役割に固執することになり、それが気づかないうちにリーダーや後継者育成の妨げになってしまうからです。

 

以上、今回は会社成長の5ステージ、そしてそれに伴う経営者の役割変更について見てきました。ぜひあなたの会社に当てはめて出口戦略のための役割変更を考えてみてください。

 

最新情報をチェックしよう!
>会社を高値で売るならEXIT CLUBへ

会社を高値で売るならEXIT CLUBへ

中小企業経営者や関わる人たちが全員ハッピーになる会社売却を目指すのがAll win EXIT CLUBです。社会課題とも言える経営者の出口戦略をご支援する日本唯一の会員制度です。

CTR IMG